赤城(群馬) 小黒檜山 2010年2月20日

所要時間 8:13 除雪終点−−8:32 峠−−8:43 49号カーブ−−9:11 尾根に取り付く−−9:25 鞍部−−9:42 小黒檜山 9:52−−10:06 鞍部−−10:35 49号カーブ−−10:47 峠



 赤城はいくつもピークがあってほとんど登っているが、小黒檜山だけは堂々の地形図記載の山なのに登っていなかった。ここは地形図では破線が描かれているが、実際には廃道化して笹が繁茂して藪漕ぎ必須の山であって、お手軽に登れる山ではない。ただし、赤城山自体は車で相当の標高を稼げるため、足で稼ぐ高度差はそれほど大きくはないので、半日もあれば充分に往復できるだろう。

 距離と標高差を考えれば無雪期でも往復可能と見たが、どうせなら雪に笹が埋もれた時期の方が楽に登れる。それに2月も後半に入りかけて杉花粉が飛び始めるシーズンでもある。赤城くらい標高があれば気温が低くてまだ花粉は飛び始めないので、杉の植林帯でも安心して登れることを考えて好天が予想される週末に出かけることにした。

 関越道上里SAで仮眠したが、これがまた車の出入りが一晩中激しくて安眠できなかった。5時半を過ぎて走り出し、駒寄PAで降りたのはいいが新しくできた道で迷って時間をロス、利根川を渡る橋をどうにか見つけて対岸に渡り、あとは適当に赤城山目指して走ればそのうちに目的の県道に入れる。あとは1本道を上がるのみ。以前、正月に登ったときはノーマルタイアで黒檜山登山口まで入れたが、今週の平日は下界では毎日雨や雪だったので赤城は結構積もっただろうか。ところが標高が上がってもなかなか両側に白いものが見えず、予想外に降雪は少なかったようだ。

 このまま問題なく大沼までたどり着くかと思ったが、カーブが連続する区間になると日影に凍結部分が見られるようになってきた。そしてあるところで車が何台も止まってチェーンを付けているではないか。しかもスタッドレスの上に。ということは、この上にスタッドレスでは上がれないようなアイスバーンがあるわけだろう。バックで下ってくる車もありその気配が濃厚だ。4WDにデフロックの車なら上がれるかもしれないが、FRの2WDに軽自動車では歯がたたないだろうとこちらもチェーンを装着することにする。1年ぶりのことだが問題なく作業は終了、しかし立ち往生している車がいるようで先行車が停止したままなので、動き出すまでしばし待機。何だかんだで現場到着から通過まで1時間近くかかってしまったが、チェーンを付ければアイスバーンの登りも問題なく通過できた。後続の車を見たところでは滑って登れないのは2WD車だけのようだった。途中の温度表示は-8℃だった。

除雪終点。雪の山になっていた 沼田方面の県道はそこそこ締まった雪

 ここを過ぎれば問題になるような凍結箇所は無く峠に到着、ここでチェーンを外そうかと思ったが、この先でまたヤバいところがあったら2度手間になるのでこのまま進む。下り坂で凍結区間があったが、さっきより傾斜は緩そうなのでもしかしたらチェーン不要かもしれなかった。下って大沼付近まで来れば平坦地になり、アイスバーンでもスタッドレスなら問題無しになったが、念のためチェーンのまま進む。今回の出発地点は沼多方面へ下る県道の除雪終点だが、湖岸を1周する道から分岐するところで除雪されておらず、除雪終点に車を置いて歩くことにした。心配していた雪質であるが、乗ってみるとそこそこ締まっており激ラッセルは無さそうだったが、日当たりの悪い北斜面ではラッセルが考えられるのでスノーシューを担いでいくことにした。

カーブは斜面直登でショートカット 峠。五輪尾根入口

 雪に覆われた車道にはスノーシューやワカンの古い足跡が残っており、そを選んで足を置けば少し沈むくらいで楽に歩けて助かった。カーブで上部に車道が見える箇所ではショートカットしたが、南斜面で日中は雪が溶けるようで、ほとんど沈まなかった。峠に着くと五輪尾根の案内看板があり、帰りに時間があればここから大沼北岸のピークを踏んで帰るか。峠で沼田市の看板が出てきたのにはちょっとビックリ。市町村合併でこんなに沼田市が広がったのか。そして登ってきた方向を振り返るとなんと前橋市の看板が! 前橋市も巨大化していたようだ。

北面の林道は雪が柔らかい 49号カーブから斜面に取り付く

 北斜面に入ると雪が柔らかくなったがまだ古いトレースがあり我慢できる範囲だった。斜面への取り付きだが、車道が大きく左に曲がって高度を下げ始める標高1410m付近が、車道が持つ標高を最も有効に使えると判断していた。そこには地形図には破線が描かれているが間違いなく廃道だろう。まあ、もしあったとしてもこの積雪で跡形もないだろうけど。案の定、カーブ付近には何の標識も目印も無く、入りやすいところから適当に斜面に取り付いた。なお、カーブの番号は49だった。

カモシカの足跡が先行 谷を越えてカラマツ植林帯を横切る

 斜面からは少し笹が顔を出しているので無雪期は笹薮らしい(濃さは不明)。すぐに谷を越えて対岸に渡り、カラマツ植林帯を登り始める。ここであまり高度を上げても意味がないが、低いところは傾斜がきつく、数10m上がった方が尾根を越えやすかった。樹林中にはカモシカの足跡がトラバースするように点々と続き、途中からそれを辿る。ここまで来ると踏み抜きが多発するようになりスノーシューを着用、ピタっと踏み抜きが収まって快調に歩けるようになった。やはりツールは有効利用しないと。ただし、ある程度締まった雪の層の上に新雪が乗っており、トラバースする区間ではスノーシューの歯が滑って何度もコケそうになった。

大きな谷に下る 谷の下流側
次の谷。ここを詰めると黒檜山との鞍部に出る 谷の左側の尾根に登る

 尾根の先に大きな谷があり、多少深さがあるので上流方向に遡って浅いところで対岸に渡ることにしたが、こちらの考えと全く同じルートでカモシカの足跡が続いていた。緩やかに尾根を越えて次の広い谷に出たが、この谷を詰めれば黒檜山との鞍部に出られるのであろう。しかし谷の下部はいいが上部はかなりの傾斜でこのまま登るのはリスクがありそうで、左側の尾根に這い上がることにした。尾根に出るとかなり幅が広く、尾根というより斜面だ。雪が無いときは登りで目印を付けないとルートを失う地形だが、今は雪の上に自分の足跡が明瞭に残るので目印を付ける必要はない。これも雪山のいいところだ。いつの間にか周囲は落葉広葉樹林になっていた。

稜線に出るまでに見た唯一の目印 鞍部が近づくと笹出現

 斜面はかなりの傾斜があるが、私のスノーシューは登りはめっぽう強く、凍結さえしていなければ12本爪アイゼン並みと言えるだろう(雪壁は無理だけど)。ヒールリフターで踵を上げればワカンよりずっと楽に登れる。今回はピッケルを持っていることもあり、普通だったら迂回するような急斜面も直線的に突破していった。雪の状態が良かったのでピッケルを打ち込まなくてもスノーシューだけで充分に体重を支えられたが。この時期でこの雪質は予想外だ。

鞍部から黒檜山方向 鞍部から小黒檜山方向
稜線上は目印が多い 登っていくにつれ笹が埋もれていく

 少し呼吸が苦しくなったのでペースを落として登り続る。稜線が近づくと笹が目立つようになり、それを避けるように進路を右に振って進むと最低鞍部にドンピシャ到着。ここまで目印は1個見ただけだったが稜線上にはいくつも目印があった。適度な高さのものもあるし、雪面上50cmくらいの物もあるので、無雪期・積雪期といろいろな時期に登られているようだ。今の積雪量は正確にはわからないが、木の周囲の穴を見ると50〜1m程度のようだ。この深さではまだ笹を押し倒すには不充分のようで、雪面から顔を出している笹はけっこうあっが、それでもルートを選べば笹藪漕ぎ皆無で勧めそうだ。稜線東側はカラマツ植林帯だった。

ここは雪庇になりかけだが全体的に積雪は50cm〜1m程度 このピークが小黒檜山

 緩やかに登って1620m峰に出ると今までの笹がきれいさっぱり消えてなだらかな雪面に覆われた気持ちの良い雪稜になった。やや西風があるが2週間前のような地吹雪になるような強風ではない。ごく小さなかわいい雪庇も見られたが、3月には形が崩れるかなぁ。正面にはすくっと立ち上がった小黒檜山が見えてきた。下からも見えていたようにてっぺんには電波反射板が立っていた。

小黒檜山山頂と反射板 山頂のリボン。無雪期で藪漕ぎだったはず
小黒檜山から見た皇海山〜袈裟丸山(クリックで拡大)
小黒檜山から見た安蘇山塊(クリックで拡大)
小黒檜山から見た浅間山〜志賀高原(クリックで拡大)
小黒檜山から見た上越国境〜上州武尊(クリックで拡大)

 小鞍部から再び傾斜がきつくなるが鞍部への登りほどではない。標高差も数10mなので好天下では鼻歌交じりの登りだ。稜線上の樹林は薄く、東に立ち並ぶ皇海山から袈裟丸の白い山並みが見えていた。登りきって傾斜が無くなると小黒檜山山頂に到着。反射板の障害にならないように木を伐採したようで見晴らしは良好だ。南は黒檜山が邪魔で見えないが、西は真っ白な浅間から志賀高原にかけて、北はほとんど雪雲に覆われて山並みは見えないが上州武尊が姿を見せていた。奥日光は雪雲の中で皇海山以南が見えていた。遠くは筑波山が浮かんでいる。鉄骨に登ればもっと楽しめそうだがスノーシューを脱ぐのが面倒でやめておいた。でも、これで上越国境に雪雲がかかっていなければスノーシューを脱いで登っただろう。

かなり劣化した木KUMO DJFとHIGの落書き。2000年11月26日のもの

 多少立派な手製の標識があるかと思いきや、待ち受けていたのは劣化してペイントが剥げ文字が消えてしまった元祖木製KUMOだった。木ではなく珍しくも反射板の足の鉄骨にくくりつけられていた。一般藪山愛好家が見てもKUMOとは判別できないくらい劣化していたが、大きさと取り付けに使用されている電線がKUMOであることを雄弁に語っている。何年前に付けられたのかは知らないがたぶん15年近く前ではなかろうか。その近くに赤テープを巻いて署名し記念撮影をしようとしたらテープのすぐ下にDJFの鉛筆による落書きを発見! なんと約10年前の日付なのにまだ明瞭に読み取れるではないか。恐ろしや鉛筆の実力。HIGと一緒に登ったようでHIGの落書きもあった。

 充分に展望を堪能して下山にかかる。こんなマイナーな山にこの時期に登るのはごく少数だろうから人に会うとは予想していなかったが、鞍部手前でワカンの単独男性がやってきた。たぶん黒檜山頂から下ってきたのかと思ったら、とんでもない急斜面をよくも登ってきましたねぇと言われたので、どうも私のトレースを辿ってきたようだった。後から人様が登ってくるのを知っていたら、もう少し登りやすいコース取りをしたのになぁとは思っても、まさか同じ日に同じルートで他に登る人がいるとは考えもしなかった。まあ、本日はこの2名でおしまいだろう。

急斜面はスノーシューを脱ぐ 2人分の明瞭なトレース

 鞍部からの下りはさすがにスノーシューを履いたままでは無理なのでアイゼンに履き替えて踵を効かせて快調に下った。そうだ、スノーシューが下りに滅茶苦茶弱いのは踵が全く使えないからだと気付いた。私が使っているスノーシューはスキーのビンディングのように足首が前後方向に自由に動かせるので、踵に力を入れようとしても全くダメだ。その点、ワカンは靴に直接くくりつけるので足首に力を入れてブレーキをかけることが可能でそこそこ急な下りも使える。ただ、私の場合、どちらを使うかの判断に地形は考慮せず、雪質で判断している。下りで使いやすいかどうかよりも登りのラッセルをどれだけ楽できるかの方が重要だろうとの認識からだ。

 急斜面が終わるとアイゼンでは踏み抜き連発となりすぐにスノーシューへと履き替える。ワカンの男性が踏み抜いた穴ぼこ付近でもスノーシューなら快適だ。接地面積の差は大きい。林道に出てもスノーシューを履いたまま歩き、全く沈まずに登りも楽だった。

 前橋/沼田境界の峠に到着、時刻も体力もまだ余裕があるのでオプションの五輪尾根未に縦走へと向かった。

 

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